正藍染と藍染め

藍染めと正藍染とは何がどう違うのかというおはなしです。

正藍染という言葉

 「正藍染」という言葉は、いわゆる「藍染」と区別するためにあります。
 藍染とは、藍(インディゴ)で染めたものすべてを言います。その原料が石炭由来の合成藍であろうと、化学的に作られたものであろうと、藍草の葉を原料としていようと、染め液を化学的に作ろうと、藍(インディゴ)を原料にして染めればすべて藍染です。なぜかというと、合成藍を苛性ソーダとハイドロサルファイトで還元させた染め液と、我々正藍染の染め液を化学的に分析すれば、同じ化学式で表すことができるからです。

 藍染めには、藍(インディゴ)を原料として染めている限り、化学的には偽物はありません。これが、藍染めの難しいところです。そこで、藍染めと伝統的な本染めを区別するために「正藍染」という言葉が作られました(藍染の世界で唯一の人間国宝千葉あやのさんは、「正藍染」として国の指定を受けています)。
 ですから、藍染めには偽物はありませんが、正藍染には偽物が存在します。「正藍染」と称して化学建てをしている藍染は、正藍染の偽物です。

正藍染と藍染めの違い

 では、正藍染と藍染めは何が違うか?
 結果が違います。

*まずは色。

 正藍染は、あくまでも青く美しく透明感があり、光を跳ね返すような明るさがあります。
 片や藍染は、色は黒く、光を吸収するように暗い。原料に“すくも”を使っていても、染め液の作り方が化学的であったりブドウ糖や水飴を使えば同じです。


*次に性質。

 正藍染は色落ちも色移りも心配ありませんし、汗にも強く、擦れにも強く、紫外線に強いなど、全ての染色堅牢度に強い。そして、独特の匂いなどと言われるものもありません。
 片や藍染は、色落ちは激しいし、色移りするから洗濯は他のものと一緒に洗えません。擦れにも弱く、汗にも弱く、紫外線にも弱い。そして、「独特の匂い」といわれる臭い匂いがします。全く「似て非なるもの」と言っても良いくらいです。

(写真は正藍染の染め液の姿。ブクブクとした藍の華と呼ばれる泡はありません。なぜか?醗酵だからです)


*染められるものも違います。

 本来藍染めは、綿・麻・絹・ウールなど、全ての天然繊維に染まります。本来の藍染めである「正藍染」も同じです。絹もウールも、綿と麻と同じように染められます。
 片や藍染は、ウールや絹の藍染めに苦労をします。特に動物性のたんぱく質で短繊維のウールは困難です(長繊維の絹は薬品のアルカリにも耐える場合がある)。

 詳しくは「ウールの藍染め」という私のブログをご紹介しておきますので、ご興味のある方はご覧ください。

(写真はアルパカ・リャマ・モヘアのウールの混紡を様々な色に藍染めして、パッチワークしたケープ)

*そして、藍染めの持つ本質的意味が違います。

 藍染は、人間の生活にとって必要不可欠なものだったから何千年もの歴史を持つのです。

 紫外線を防ぐ⇒砂漠の民の文化。
 血流を良くする(遠赤外線効果)⇒砂漠の民の文化
 抗菌作用⇒藍染の布で水を濾(こ)して飲む→腹痛を防ぐ。
     ⇒旅人は藍染の布を持てと言われてきた。
     ⇒野良着・剣道着→汗疹を防ぐ。汗臭くならない。
     ⇒皮膚の痒み(アトピーなど)を防ぐ。
     ⇒おしめ→かぶれにくい
 毒虫除け⇒ジーパン・手甲脚絆は毒蛇避けと言われる
 丈夫で長持ち⇒虫に食われず擦れに強い。→ジーパン,野良着などの労働着。

 何故人類は長い間藍染めを続けてきたか?意味ある事だったからです。
 藍草から藍を醗酵でとることで意味が生じるのです。 
 醗酵とは、「有機物が微生物によって分解され、人間に取って有益なものに変化すること」。ですから藍染めは、醗酵が基本です。
 
 醗酵でなく還元という化学反応の藍染めは、藍染めの存在の意味を失います。
 苛性ソーダや石灰を使い、強アルカリ性にして還元させた染め液は、生活環境を破壊し、人間を犯します。
 無意味ではなく、有害となります。

 藍染が本染め(正藍染)でなければならないのには、こういういう理由があるのです。